クラウドキッチンで飲食店・菓子工房開業のメリットデメリット【グレーな会員契約書に要注意】

クラウドキッチンイメージ 販売のこと

飲食事業を開業する場合、保健所の営業許可が必要の為、
①シェア(レンタル)キッチンを借りる
②クラウドキッチンを借りる
③自分で場所を確保して、保健所検査に通るように工事してキッチンを作る

のどれかが選択肢となります。
①は初期費用がかからない一方、使いたい時に予約できないかもしれないし、制限時間がある(予約時間内に片付け撤収までしなければならない)、荷物の持ち運びが大変、使用料が高いなど事業として使うにはデメリットが多いです。
③は上記のようなデメリットはないものの、初期費用が多額になる為初めての開業では大変リスクが高いです。

そこで、②クラウドキッチンを検討、実際に借りて営業していました。
この記事ではクラウドキッチンについて、実際に使った感想とメリットデメリット、注意点を書いておきます。
結論から言うと、私は二度と借りないと思います。

クラウドキッチンとは

クラウドキッチンとは、デリバリーやテイクアウト用食品のみの準備を目的として商用厨房を使うもので、イートインスペースはありません。
最小限のコストでセントラルキッチンを作ったり、バーチャル・ブランドを立ち上げたりすることが可能です。

ひとつのクラウドキッチンの中には、壁や仕切りで複数の厨房が作られていて、いくつかのお店が入居しているのが特徴といえます。
(ゴーストキッチンの場合は厨房の数はひとつ)
シェアキッチンと比べると、シェアキッチンは運営会社が営業許可を持っていて時間単位で予約して利用するのに対し、
クラウドキッチンは営業許可を入居者が取得してひと月単位で自分専用の厨房として利用できます。
つまり、自分で厨房を作るより低コスト低リスクで開業しやすく、シェアキッチンの不便さを解消しており、独立開業にはぴったりな施設といえそうです。

クラウドキッチンのメリット

既に厨房機器や設備が揃っている

区画内に既に厨房機器や設備が揃っているため、厨房機器を新しく買う費用や時間は不要、内装工事もすることなく開業することができます。
つまり、すぐ(1か月くらいで)開業できるメリットがあります。
また、自分で厨房を作る場合は自分で厨房図面を準備して、何度も保健所や工事会社とやりとりする手間がかかりますが、クラウドキッチンでは初めから営業許可の取れる設備となっていることで、図面は運営会社が用意してくれたり、保健所や工事会社とやりとりする手間や時間が省けました。

自分で厨房を作るよりは初期費用が手頃

自分で厨房を作るとすると、不動産取得費+内装工事費+厨房機器購入費で初期費用のみで数百万円かかります。
これに対してクラウドキッチンの初期費用はだいたい数十万円で済むので、かなり安く開業することが可能です。

クラウドキッチンのデメリット

光熱費が高い

電気代が異様に高かったです。
エアコンつけてる時期はひと月の電気代が2万円くらいになりました。
クラウドキッチンでは電力会社や電力契約を自分で選べない為です。
この点を時間貸しのシェアキッチンや自分で厨房を作る場合と比較すると、
シェアキッチンは利用料込、自分で厨房を作る場合は自分で電力会社を選べる(賃貸物件で選べない場合を除く)ので、クラウドキッチンのデメリットといえます。

ごみ出しなどに手数料がかかる

任意でしたが、いろんなオプションがあり、クラウドキッチンの場所でごみを出すなどは有料になります。
月額の利用料と光熱費以外にも色々な費用が上乗せされる可能性があります。

厨房の自由度が低い

新たに購入しなくても厨房機器が揃っているのはメリットでしたが、
必要な機器を追加する場合は置き場がなかったり、不要な厨房機器が備え付けてあったりします。
また、クラウドキッチンではワンオペが想定されるため、1人か多くても2人がやっとの狭さです。
焼き菓子やパンであれば、(家庭用オーブンを使う場合でなければ)業務用オーブンを置くスペースがないのがデメリットになります。

あとは以下に書きました入退去時の費用項目や匂いが共有されることもデメリットです。

クラウドキッチンの注意点

『賃貸契約』ではなく『会員契約書』

クラウドキッチンでは運営会社(貸主)と入居するお店(借主)の契約は、『会員契約書』となります。
クラウドキッチンによって呼び方は違うかもしれませんが、あえて『賃貸契約』と言わない点が要注意です。
時間貸しのシェアキッチンであれば問題ではないですが、クラウドキッチンの一区画が
壁とドアで区切られて
自分のみが専有している個室
料金が月額定額

であれば、不動産のように業務用家電付きの賃貸契約と言う方が実態に見合っています。にもかかわらずあえて『会員契約書』と言うのは、後述の初期費用や退去時の原状回復費用で借り手が不利になる仕組みにする為と考えられます。

クラウドキッチン契約書イメージ

実際のクラウドキッチンの会員契約書

初期費用

不動産賃貸契約の場合、敷金であれば原則、退去時に返還されます。
これに対して、クラウドキッチンは初期費用は入会費や会員加盟金、施設利用準備金などという言い方になり、不動産契約ではないため返還されることはありません。
借りる時は気にしていなかったのが後悔ですが、「施設利用準備金」(使用料1か月分)が何に使うのかは契約前に確認するべきと思いました。
今思えば、入居前に清掃した後もなかった(棚など埃だらけだった)ので、どんな準備をしたのかとても怪しい費用です。

クラウドキッチン初期費用

クラウドキッチンの怪しい初期費用『施設利用準備金』

退去費用

これも不動産賃貸契約であれば、契約書に金額を明示していないクリーニング費用、貸主が負担するべき原状回復などは負担を拒否することが可能です。
しかし、クラウドキッチンは不動産賃貸契約ではないので、最初に明示されていない費用や原状回復費用も全部請求されました。
退去時の費用や原状回復費用も契約前に具体的な金額を確認しておくべきです。
例えば、通常の家具家電を置いていた跡の原状回復は不動産賃貸契約では借主が負担しないですが、クラウドキッチンは原状回復費用を請求される可能性があります。それもぼったくりみたいな値段で。

以上より実際は不動産の賃貸と変わらないのに、通常の不動産賃貸契約が全く通用しない(つまり借主の不利にしかならない)ことが注意点です。

別の区画にどんなお店が入るのか確認する

借りていたクラウドキッチンで大変気になったのが、別区画に入居するラーメン屋さんの匂いです。
隣の区画ではなかったし、壁とドアでしっかり区切られているのに、ダクトや換気設備から?、こちらの商品や紙の資材に匂いが移っていないか心配になるくらいにいつも強烈な匂いが伝わってきていました。
運営会社にも匂いのことは話したのですが、「注意してるんですけどね〜」みたいな軽い感じで、結局匂いは相変わらずでした。
対策としては、見学の時に入居しているお店や匂いの強い業態のお店の入居予定を確認できると良いです。
(ただし、匂いのきついお店が見学時に営業していれば。)
自分より後に入ってこられると、匂いについては同じフロアで独立したキッチンではない以上どうしようもないので困りました。

まとめ

キッチンに限らず定額のレンタルオフィス等でも、壁やドアで他の区画と仕切られて個室のようになってる場合は、不動産の賃貸契約と変わらないと考えるのが妥当だと思います。
にもかかわらず、賃貸契約書や家賃、賃料と言わず、あえて『会員契約書』や『使用料』、『会員費』と言うところが不動産賃貸契約(←借主が守られやすい)の適用を免れるための脱法のようにも感じます。
確定申告の仕訳でも、シェアキッチンは【賃借料】で、クラウドキッチンは【地代家賃】が実態に見合うと考えます。

このように、実態は不動産の賃貸なのに契約書面上はシェアキッチンの利用規約のようなので、とてもグレーなビジネスモデルだと思いました。
何にしても、ルールは作った方に有利ということは覚えておきたいし、怪しい点は契約前に徹底的に突っ込まねばと勉強になりました。

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